令和4年11月21日時点
【本制度で影響を受ける人】
『自身が消費税の納税義務者(原則計算)である方』➡自身の消費税の負担が増える
『主な取引相手が消費税の納税義務者(原則計算)で自身の消費税が免税されている方』➡取引相手の消費税の負担が増えるため、今後の取引関係に影響が出る
<目次>
1-1.「インボイス」とは
売り手が買い手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものをいいます。
具体的には、下記のような「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「税率ごとに区分した消費税額等」の記載が追加された請求書や領収書、納品書などのことをいいます。
【インボイスの記載例】
<記載事項>
①事業者の氏名又は名称及び登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
⑤税率ごとに区分した消費税額等
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
またインボイスを交付できるのは、インボイス発行事業者に限られます。
インボイス発行事業者となるためには、登録申請手続を行い、登録を受ける必要があります。(なお課税事業者でなければ登録を受けることはできません)
1-2.「インボイス制度」とは
売り手であるインボイス発行事業者は、買い手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。
買い手は消費税の計算(原則計算)を行ううえで、仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、取引相手(売り手)である登録事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となります。
つまり「インボイス制度」により、納める消費税に影響(増税)を受けるのは、原則計算で消費税を計算している事業者の方です。
1-3.消費税の計算方法(原則計算)
納める消費税=①売上げで預かった消費税 - ②仕入れや経費で支払った消費税
上記②の差し引く計算を「仕入税額控除」といいます。
<消費税の計算事例>
①売上げで預かった消費税=2,000円(売上げ22,000円)
②仕入れや経費で支払った消費税=1,500円(仕入れ16,500円)
□インボイス制度導入前
納める消費税=①2,000円 - ②1,500円=500円
□インボイス制度導入後
・インボイスあり
納める消費税=①2,000円 - ②1,500円=500円(従来とおり)
・インボイスなし
納める消費税=①2,000円 - ②0円※=2,000円
(※経過措置あり:下記「インボイス制度の経過措置」を参照)
つまり原則計算で消費税を納めている事業者が、インボイスを発行できない事業主から仕入れなどを行うと、納める消費税が多くなります。
1-4.インボイス制度の開始時期
2023年10月1日から開始予定です。
2023年10月1日から登録を受けるためには、原則として、2023年3月31日までに登録申請手続を行う必要があります。
インボイスを交付することが困難な以下のような取引については、インボイスの交付義務が免除されます。つまり、買い手は消費税の計算(原則計算)を行ううえで、インボイスがなくても仕入税額控除の適用を受けることができます。
① 公共交通機関である船舶、バス又は鉄道による旅客の運送(3万円未満のものに限ります。)
② 出荷者が卸売市場において行う生鮮食料品等の譲渡(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として 行うものに限ります。)
③ 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の譲渡(無条件委託方式か つ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
④ 自動販売機等により行われる課税資産の譲渡等(3万円未満のものに限ります。)
⑤ 郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
⑥ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)
⑦「古物営業」「質屋業」「宅地建物取引業」を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物・質物・建物の購入など
インボイス制度の実施後は、免税事業者や消費者など、適格請求書発行事業者以外から行った課税仕入れに係る消費税額を控除することができなくなります
しかし、激変緩和の観点から、免税事業者等からの仕入れについても、インボイス制度実施後6年間は仕入税額相当額の一定割合を控除可能な経過措置が設けられています。
政府・与党が、2023年10月から消費税のインボイス制度が始まるのに当たり、少額ならインボイスが無くても税額控除を認める時限的な特例措置の創設を検討していることが令和4年11月18日に分かりました。
インボイス発行に伴う事務的な負担増や、会計システムを導入する場合の費用など、小規模事業者にとって大きな障害がありましたが、一定の条件下でこのような負担の軽減を検討するとのことです。(詳細は、23年度税制改正に反映させるとのこと)
(例えば、数年間の時限措置?、納税者本人の売上高1億円以下?、一つの取引金額1万円未満?の場合には、インボイスがなくても仕入税額控除OK?などが考えられる。)
またフリーランスなど小規模事業者の負担軽減をするため、免税事業者が課税事業者にかわる際、納税額を売上時に受け取る消費税の2割に抑えるという新たな対策案も浮上しています。(2023年10月から3年間の時限措置を予定)
インボイス制度の導入に伴い、売り手・買い手ともに消費税への影響があります。
下記の一覧表において、①「販売取引(売り)」を行う場合の「取引相手」への影響および②「購入取引(買い)」を行う場合の「自身」への影響をまとめております。
5-1.「販売取引(売り)」を行う場合の「取引相手」への影響
<影響があるケース>
ケース③:自身が「免税」,取引相手「課税(原則)」+「小規模事業者」
□一定の少額な取引→影響を与えない
□それ以外の取引→取引の時期に応じて、取引相手の消費税の負担が増加する
例えば、1,000円消費税を預かった(11,000円の売上げを行った)場合、
・2023年10月~2026年9月中の取引→1,000円×20%=200円の負担が増える。
・2026年10月~2029年9月中の取引→1,000円×50%=500円の負担が増える。
・2029年10月以降の取引→1,000円×100%=1,000円の負担が増える。
ケース④:自身が「免税」,取引相手「課税(原則)」+「小規模事業者ではない」
□取引の時期に応じて、取引相手の消費税の負担が増加する
(ケース③のそれ以外の取引と同様)
ケース③④の場合、取引相手(売先)によっては、免税事業者から仕入れなどを行うと、消費税の負担が増加するため、取引を控えることが予想されます。(つまり取引相手(売先)との取引が減少する)
そのため現在、免税事業者の方でも、取引を今まで通り継続してもらうために、取引相手から「インボイス登録すること(免税から課税事業者になる必要があり、結果、消費税の負担が増加する)」や、または「免税事業者を継続したまま消費税相当額を値引きする(結果、売上が減少する)」などの対応を求められるケースも想定されます。
<影響がないケース>
ケース①:取引相手はそもそも消費税を納めていないため影響を与えない(相手が海外の間場合も同様)
ケース②:取引相手は、消費税の納税義務者ではあるが、消費税の計算(簡易計算)に影響しないため、納める消費税にも影響を与えない
ケース⑤⑥:自身がインボイス登録を行うことで、取引相手側では従来通りと同じ取扱いとなり、影響を与えない
5-2.「購入取引(買い)」を行う場合の「自身」への影響
<影響があるケース>
ケース③:自身=「課税(原則)」+「小規模事業者」,取引相手=「免税」
□一定の少額な取引→影響を受けない
□それ以外の取引→取引の時期に応じて、自身の消費税の負担が増加する
例えば、1,000円消費税を預けた(11,000円の仕入れを行った)場合、
・2023年10月~2026年9月中の取引→1,000円×20%=200円の負担が増える。
・2026年10月~2029年9月中の取引→1,000円×50%=500円の負担が増える。
・2029年10月以降の取引→1,000円×100%=1,000円の負担が増える。
ケース⑤:自身=「課税(原則)」+「小規模事業者でない」,取引相手=「免税」
□取引の時期に応じて、自身の消費税の負担が増加する
(ケース③のそれ以外の取引と同様)
ケース③⑤の場合、取引相手がインボイス登録をしていないため、自身の消費税の負担が増加します。よって「今後の主な仕入先などの変更」もしくは「価格交渉」などの対応の必要性も出てきます。
<影響がないケース>
ケース①:自身はそもそも消費税を納めていないため影響を受けない
ケース②:自身は、消費税の納税義務者ではあるが、消費税の計算(簡易計算)に影響しないため、納める消費税にも影響を受けない
ケース④⑥:取引相手がインボイス登録を行うことで、自身側では従来通りと同じ取扱いとなり、影響を受けない
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